柔道整復師 早川 真 先生
【膝関節負傷に対する結論】
MCC (RICマニュアル両足or片足*)の屈伸運動により膝関節負傷の改善が起きる。
*両足は左右の大腿部にカフを巻き、片足は大腿部と下腿部にカフを巻く。
【膝関節負傷が改善に至る根拠】
負傷原因の追求
重力下の二足起立歩行により起きる左右差がある。
その左右差は、外旋、外反、伸展が起きる荷重側(能動的)と内旋、内反、屈曲が起きる非荷重側(受動的)と考えています。
その影響で、関節面相互のアライメント(本来は整列したものの状態を示す言葉で、関節や人工関節の機能を十分発揮できるような最適な位置関係のこと。 最適で正しく配置された骨の位置。 例えば、膝関節が正常なかみ合わせとなるように大腿骨と脛骨の位置を定めること)の変化が起き、外力を受ける許容範囲の減少で負傷しやすくなると考えています。そのために普段と同じことを行っただけ(弱い外力)でも負傷に至ると考えています。年齢性別に関係ない条件です。
負傷症状
- 外旋痛:斜膝窩靱帯、内側半月膝蓋靱帯の伸張
- 外反痛:内側々副靱帯、内側大腿膝蓋靱帯の伸張 外側半月板の嵌頓
- 伸展痛:内・外半月膝蓋靱帯、斜膝窩靱帯の伸張
- 内旋痛:後半月大腿靱帯、前・後十字靱帯、膝横靱帯の伸張
- 内反痛:外側々副靱帯、外側大腿膝蓋靱帯の伸張 内側半月板の嵌頓 鵞足炎(鵞足付着筋腱の弛緩)
- 屈曲痛:内・外大腿膝蓋靱帯、膝蓋靱帯の伸張
負傷に対する施術
関節面相互のアライメントを正しく整えるために疼痛方向と逆側の無痛方向を確認します。その無痛方向のアライメント整復(無痛靱帯整復法*1、無痛健足通法*2)を行います。下記に具体的な方法を述べさせていただきます。
*1無痛靱帯整復法 拮抗関係にある靱帯で、片側が伸張により疼痛や機能障害が発生した際に行う整復法です。伸張靱帯に対する無痛方向の短縮整復です。
*2無痛健足通法 腱の弛緩により腱の波打ち状態が起きて反射機能(ゴルジ腱反射)が消失します。その時に起きる機能障害に対して行う筋の抵抗運動です。(プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系 腱の構造(Kristicによる)参照)
施術法(ほとんどが靱帯に対する無痛靱帯整復法です)
外旋痛が有れば、内旋で無痛を確認します。関節面相互を正しく向き合わせるように圧をかけて内旋整復を行います。
外反痛が有れば、内反で無痛を確認します。関節面相互を正しく向き合わせるように圧をかけて内反整復を行います。外側半月板の嵌頓が有れば整復感が有り、関節面相互は正しく向き合います。
伸展痛が有れば、屈曲で無痛を確認します。関節面相互を正しく向き合わせるように圧をかけて屈曲整復を行います。膝関節伸展状態で膝蓋骨を膝蓋面に抑え続けながら上方に圧迫して疼痛が有れば、膝蓋骨を上方から圧迫して無痛整復を行います。
内旋痛が有れば、外旋で無痛を確認します。関節面相互を正しく向き合わせるように圧をかけて外旋整復を行います。
内反痛が有れば、外反で無痛を確認します。関節面相互を正しく向き合わせるように圧をかけて外反整復を行います。内側半月板の嵌頓が有れば整復感が有り、関節面相互は正しく向き合います。鵞足炎の症状が有れば上記の整復後、鵞足付着筋の抵抗運動を行い腱の緊張を促して筋の機能障害の回復を行います。(無痛健足通法)
屈曲痛が有れば、伸展で無痛を確認します。関節面相互を正しく向き合わせるように圧をかけて伸展整復を行います。膝関節屈曲状態で膝蓋骨を膝蓋面に抑え続けながら下方に圧迫して疼痛が有れば、膝蓋骨を下方から圧迫して無痛整復を行います。
上記の施術を20秒×3回くらい行うことで、改善を感じていただけることが多いと思います。
施術による結果
数日の施術で改善結果を得ています。
靭帯の無痛整復の根拠になる文研を最近見つけました。立体組織学図譜(Ⅱ)組織編 著者Radivoj V.Krstic 図版78無定形の強靭結合組織 関節包の一部 「〇〇関節包を作っている。この組織の第一の特徴は、様々な方向に交差する膠原線維とその束で、これに弾性線維がまばらに伴っている。弾性線維の役割は、変形した強靭結合組織を基の状態に戻すことである」と記載が有りました。無痛靱帯整復法は、この弾性線維の役割を助ける方法であると思います。
MCCによる施術内容
MCCによる効果の考察
MCC(RICマニュアルで軽い膝関節の屈伸運動)により大腿部or下腿部の周囲に圧をかけることで、直下を通過する筋全体に一定の圧がかかります。この状態は、前腕屈筋群を被うように付く上腕二頭筋腱膜に似ていると考えました。この場合の腱膜の効果は、前腕屈筋群が同時に収縮する際の増幅機能ではないかと考えています。
MCCによる圧迫はその増幅機能が下肢全体で起きるのではないかと考えました。それにより膝関節面相互の向き合いで、一時的に膝関節包の遊び(余裕)が最小減になるのではないかと思います。結果、関節面相互が正しく向き合い、不必要な動揺が削除されて関節本来の必要な規制だけが再現されるのではないでしょうか。その再現が、規制を司る靱帯の正常化を起こし疼痛の改善が起きるのだと考えました。同時に、関節面相互が正しく向き合うことで腱の弛緩も改善されます。腱が波打ち状態から突っ張った状態になることで腱反射が機能回復を導きます。
上記により、最初に記載した私のほとんどの施術内容を、MCCは3分ほどで改善を進めていくと感じています。特に高齢者や術後の機能障害に対して目を見張る改善結果を実感することが出来ています。
左右大腿部のRICマニュアル
【1】、軽い屈伸を自分の楽なペースで行います。その際、内果と外果を結ぶ線上に荷重を意識します。
足関節の固定意識(ステーブルジョイント)が起きて股関節と膝関節が動きやすくなります。大腿部の全体の筋が増幅されて関節面相互がよりしっかりと向き合うことになります。関節包を取り巻く大腿部の筋腱が、適度な緊張状態で関節面相互を向き合わせてくれることになります。
この運動時に無痛であれば、関節包内や関節包外の靱帯が伸張されることが無く運動を続けることができます。
結果、伸張靱帯は短縮されて疼痛や機能障害の改善が起きると考えています。高齢者の変形を伴う疼痛にも驚くほどの効果が起きました。
【2】、上記したように膝関節の靱帯の改善が起きると言うことは、関節面相互の本来理想とする向き合いが確立すると言うことになります。内反痛で起きる鵞足炎に対しても外反傾向が起きることで効果が期待できます。
片側の大腿部と下腿部のRICマニュアル
【1】、この施術は、疼痛や機能障害が強く頑固な症状に行います。
軽い屈伸を自分の楽なペースで行います。その際、内果と外果を結ぶ線上に荷重を意識します。足関節の固定意識(ステーブルジョイント)が起きて股関節と膝関節が動きやすくなります。
大腿部及び下腿部の全体の筋が増幅されて関節面相互がよりしっかりと向き合うことになります。関節包を取り巻く大腿部と下腿部の筋腱が、適度な緊張状態で関節面相互を向き合わせてくれます。この運動時に無痛であれば、関節包内や関節包外の靱帯が伸張されることが無く運動を続けることができます。
結果、伸張靱帯は短縮されて疼痛や機能障害の改善が起きると考えています。高齢者の変形を伴う疼痛にも驚くほどの効果が起きました。
【2】、症状の強めの患部に対しての施術のため、対象になる患者様は高齢者が多くなると思います。そのために屈伸が困難であれば椅子に掛けて無痛範囲の屈伸でも効果が期待できると思います。