MCCを用いた反射機能の改善 早川接骨院様

柔道整復師 早川 真 先生

MCCを用いた反射機能の改善

筋の起始停止間の短縮により起きる腱の波打ち現象(プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系第2版参照)は、ゴルジ腱反射の機能低下を起こしやすいと考えています。腱自体が張っている状態でないと腱反射が起きないからです。その状態を改善する方法は、筋の収縮を促して腱の張った状態を続けさせることです。

筋の起始停止間の短縮は、関節面相互が不規則になり靱帯短縮(規制方向)の状態が起きているからです。根本的な改善方法は、関節面相互を正しく向き合わせて規制を司る靱帯が短縮から正常な長さに整うことです。そうすることで筋の起始停止間の長さも短縮から正常に整うことになり腱の機能低下は起きなくなります。

MCC の圧迫により、上記の正常な状態が確立することができないかと考えました。

関節面相互を正しく向き合わせるためには、関節周囲の拮抗筋相互の反射機能がいつも充実していることです。そのためには機能不全を起こしている筋に対して、腱膜のような存在(腱膜が包む筋の統一化を図り力を増幅する)が有れば筋上膜の圧迫により腱が突っ張った状態を得ることがしやすいのではないかと仮説しました。

その仮説で、膝関節の機能不全に対してMCC のカフを大腿部に巻き、軽く屈伸させてみました。数回行うことにより機能不残が改善する結果を得ることが出来ました。

他の関節にも試してみたので、簡単な説明とそれぞれの内容を報告させていただきます。

【運動器系の反射】

 一般的に筋や腱の反射は次のようだと思います。

■比較的弱い運動の反射

伸張反射・・・骨格筋が引き伸ばされると、その筋が収縮する。筋肉の伸張による張力を筋肉内の筋紡錘が感じて起こる。

■強い運動の反射

ゴルジ腱反射・・・腱が強く引っ張られると、ゴルジ腱器官が感じて1b線維を通じて中枢に伝達し、主動筋を抑制して弛緩する。同時に拮抗筋を緊張させる反射。筋の負傷を防ぐ反応です。

【反射機能の低下】

関節で靱帯が伸張されると、筋や腱は保護のために緊張を起こします。この緊張で筋や腱の反射機能は正常に働き拮抗関係にある靱帯はあまり短縮されない状態で維持されるはずです。しかし長期や強い習慣により靱帯が短縮されるような状況が起きることが有ります。生理的な範囲を超えて靱帯の短縮が続くことで筋や腱の反射機能の低下が起きると考えました。反射機能の低下は関連した関節周囲の筋の総合的な関係を悪くして機能障害を起こします。

■ゴルジ腱反射の機能低下

筋の起始停止間が短縮されると腱が弛緩して波打ち状態になります。その状態が起きるのは、関節の規制方向で関節包の強靭結合組織(靱帯)が短縮されることで起きやすいと考えています。 腱の波打ち状態は、主導筋の抑制も拮抗筋の緊張もできなくなります。その結果、主導筋は抑制ができない緊張を起こし腱に衝撃を与えます。拮抗筋は主導筋を助けることが出来なくなり、そのために主導筋の腱の損傷が起きることになります。

【反射機能の低下した関節に対するMCC使用の例】

腱の反射機能が低下した例を述べ、MCCによる対策を紹介させていただきます。

肩関節の機能不全「腕を後ろに回せない?」

肩関節の内旋が続き中関節上腕靱帯の短縮が起きると肩甲下筋の腱が弛緩します。ゴルジ腱反射の機能低下により肩甲下筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の棘下筋の緊張も起きにくくなります。そのために肩関節の回旋運動の機能が悪くなります。反射機能が悪くなると関節周辺のほとんどの筋が緊張を起こし、その関節の機能停止を一時的に起こすのではないかと考えています。

MCCによる対策

 肩関節にはカフが巻けないので上腕部にカフを巻きます。上腕二頭筋長頭腱により上腕骨頭が関節窩の下にできるだけ移動するように肘関節を屈曲した状態で行います。それは上腕骨頭が下がることで肩甲下筋腱や棘下筋腱にテンションをかけるためです。その状態で回旋運動を行っていただきます。肩関節周辺の筋の機能回復により反射が行き届き、機能障害が改善します。できるだけ弱い運動がベストです。強いと他の筋を使うからです。

■股関節の機能不全「股関節を外転できない?」

股関節の外転が続き腸骨大腿靱帯の短縮が起きると中・小殿筋の腱が弛緩します。ゴルジ腱反射の機能低下により中・小殿筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の内転筋群の緊張も起きにくくなります。そのために股関節の外・内転運動の機能が悪くなります。股関節周囲の機能障害が発生すると考えています。

MCCによる対策

 股関節にはカフが巻けないので大腿部に巻きます。大腿部の全ての筋に対して腱膜状態を作ることで股関節の関節面相互が正しく向き合います。その状態で、片足立ちで股関節の内・外転運動を行います。股関節周辺の筋の機能回復が起きやすくなると思います。

■膝関節の機能不全「あぐらをかく際に痛い?」

 膝関節の内反が続き内側々副靱帯の短縮が起きると鵞足付着筋の腱が弛緩します。ゴルジ腱反射の機能低下により鵞足付着筋の反射機能が起きにくくなり、拮抗筋の大殿筋や大腿筋膜張筋の緊張も起きにくくなります。そのために膝関節の機能不全が起きます。

MCCによる対策

 大腿部にカフを巻きます。大腿部の全ての筋に対して腱膜状態を作ることで膝関節の関節面相互が正しく向き合います。その状態で、膝関節の屈伸運動を自分のペースで行っていただきます。膝関節の機能回復が起きます。

■肘関節の機能不全「肘の調子が悪い?」

 肘関節の回内や内反が続き内側々副靱帯(後斜走)の短縮が起きると上腕三頭筋腱の内側部が弛緩します。ゴルジ腱反射の機能低下により上腕三頭筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の上腕二頭筋の緊張も起きにくくなります。そのために肘関節の機能不全が起きてしまいます。

MCCによる対策

 上腕部にカフを巻きます。上腕部の全ての筋に対して腱膜状態を作ることで肘関節の関節面相互が正しく向き合います。その状態で、肘関節の屈伸運動を自分のペースで行っていただきます。肘関節の機能回復が起きます。

■足関節の機能不全「足が変な感じがする?」

 足関節の内反(無意識で荷重を受け止める側=能動側)が続き、底側踵舟靱帯の短縮が起きることで後脛骨筋腱の弛緩が起きます。ゴルジ腱反射の機能低下により後脛骨筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の長腓骨筋の緊張も起きにくくなります。そのために足関節の機能不全が起きてしまいます。

足関節の外反(意識的に規制方向に頼り行動する側=受動側)が続き、前距腓靱帯の短縮が起きることで長腓骨筋腱や第三腓骨筋腱の弛緩が起きます。ゴルジ腱反射の機能低下により長腓骨筋や第三腓骨筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の後脛骨筋の緊張も起きにくくなります。そのために足関節の機能不全が起きてしまいます。

MCCによる対策

 下腿部にカフを巻きます。下腿部の全ての筋に対して腱膜状態を作ることで足関節の関節面相互が正しく向き合います。その状態で、足関節の内反外反運動を自分のペースで行っていただきます。足関節の機能回復が起きます。

■手関節の機能不全「手首がおかしい?」

 手関節の尺屈が続き、内側手根側副靱帯の短縮が起きることで尺側手根伸筋腱の弛緩が起きます。ゴルジ腱反射の機能低下により尺側手根伸筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の長母指外転筋や長・短橈側手根伸筋の緊張も起きにくくなります。そのために手関節の機能不全が起きてしまいます。ドケルバンの原因になるかもしれません。

手関節の撓屈が続き、外側手根側副靱帯の短縮が起きることで長母指外転筋や長・短橈側手根伸筋の弛緩が起きます。ゴルジ腱反射の機能低下により長母指外転筋や長・短橈側手根伸筋の抑制が起きにくくなり、拮抗筋の尺側手根伸筋の緊張も起きにくくなります。そのために手関節の機能不全が起きてしまいます。

■MCCによる対策

 前腕部にカフを巻きます。前腕部の全ての筋に対して腱膜状態を作ることで手関節の関節面相互が正しく向き合います。その状態で、手関節の尺屈撓屈運動を自分のペースで行っていただきます。手関節の機能回復が起きます。